「機械で冷やす」から「みんなで髪を守る」へ。 頭皮冷却療法に対するチーム医療に関する研究が国際誌に掲載されました

虎の門病院 ブレストセンター 新着情報

「機械で冷やす」から「みんなで髪を守る」へ。
頭皮冷却療法のチーム医療に関する研究が国際誌に掲載されました

国際誌 Healthcare 掲載
査読済論文
2026年7月

患者さんの「自分らしさ」を守るために

乳がんの抗がん剤治療では、多くの方が脱毛を経験されます。髪が抜けることは、治療の効果とは直接関係がないにもかかわらず、患者さんの気持ちや日常生活に大きな影響を与えます。

当院ブレストセンターでは、脱毛を少しでも軽減するため、頭皮冷却療法(機械式 PAXMANスカルプクーリングシステム)を取り入れています。頭皮を冷やすことで血流を抑え、抗がん剤が毛根に届きにくくする治療法です(保険外診療・当院で乳癌治療を受けている方のみと対象として)。

このたび、当院が実践してきた「多職種が連携して頭皮冷却を支える体制」の取り組みと成果を報告した論文が、国際学術誌 『Healthcare』(MDPI)に掲載されました。

虎の門病院ならではの「チームケア」とは

頭皮冷却療法の効果を高めるうえで最も大切なのは、冷却キャップを患者さんの頭の形にぴったり合わせることです。少しでも隙間があると、冷却が不十分になってしまいます。

これまでは、化学療法の管理と並行して看護師がキャップの装着も担っていましたが、多忙な診療の中で一人ひとりの頭の形に細かく対応することには限界がありました。そこで当院では、以下のような体制を整えました。

これまでの体制

看護師が化学療法の管理とキャップ装着の両方を担当。患者さんごとの細かな調整に十分な時間をかけることが難しい状況でした。

新しいチームケアの体制
  • 院内美容室(ANKS)の専門美容師がキャップの装着・密着調整を担当
  • 頭部の形・毛量・頭皮の状態を記録する専用カルテを導入し、毎回同じ品質で装着
  • 看護師は医療管理に専念し、美容師が技術的なサポートを担当する明確な役割分担
  • 看護師と美容師が事前に合同で手技を統一

※ 院内美容室(ANKS)の美容師は国家資格(美容師免許)を持つ専門職です。

治療当日の流れ(イメージ)

STEP 1: 医師による説明・適応確認

STEP 2: 看護師による事前評価

STEP 3: 美容師+看護師で冷却キャップを装着

STEP 4: 化学療法中の状態確認・記録

STEP 5: 次回に向けた調整・引き継ぎ

薬剤師もレジメン(投薬計画)の確認と副作用情報の提供を通じてチームを支えています。

研究で確認された成果

2021年〜2022年、2023年~2024年に当院で頭皮冷却療法を受けられた患者さん145名(体制導入前66名・導入後79名)を比較した結果、以下の変化が確認されました。

治療完遂時に重い脱毛(ウィッグ等が必要な程度)を経験した方の割合

53.0% 32.9%

(約20ポイントの減少)

治療期間全体のうち、重い脱毛が続いていた時間の割合

17.3% 6.5%

(約3分の1以下に短縮)

また、統計的な解析(多変量解析)によって、成熟したチームケアの体制そのものが、脱毛の軽減に独立して関連していることが示されました。

※ 本研究は単施設での後ろ向き研究であり、結果の解釈には一定の限界があります。「重い脱毛」はCTCAE v5.0のGrade 2以上(ウィッグ・スカーフ等の使用を要する程度)を指します。

患者さん・ご家族へ

当院では、がんを治すための治療はもちろん、治療中も患者さんが
「自分らしく」「安心して」過ごせるよう、
医師・看護師・薬剤師・美容師が一体となって取り組んでいます。

頭皮冷却や乳癌治療について、気になることや不安なことがあれば、いつでもブレストセンターへお気軽にご相談ください。

【掲載論文情報】

タイトル:Association Between a Refined Multidisciplinary Team-Based Care Model and Scalp Cooling Efficacy for Chemotherapy-Induced Alopecia Outcomes Among Breast Cancer Patients: A Single-Institution Retrospective Before–After Study

掲載誌:Healthcare (MDPI), 2026, Vol.14, 2148

著者:田村宜子、長岡優紀子、佐野ゆかり、小林蓉子、田中希世、栗川美智子、柴田章雄、田辺裕子、山口雄、平賀知子、阿部あゆみ、金森秋恵、柿本裕子、清水英子、大坂美香子、小田泰弘、小倉真由美、岡本竜介、川端英孝

DOI:https://doi.org/10.3390/healthcare14142148