1,乳腺線維腺腫

  • 概念

線維腺腫は,間質結合織性成分と上皮性成分の過剰増殖による良性結節病変である。好発年齢は20〜30歳代で,乳がんより若年で生じる。通常は2〜3cmになると増殖が止まり,自然退縮するものもある。さらなる増大傾向を示すものは比較的少なく,その原因として,経口避妊薬や妊娠,ほかのホルモンの刺激があげられることもあるが,多くの場合明確な理由は不明である。線維腺腫の上皮成分から乳がんが発生するケースがまれにある。

  • 症状・診断

症状は平滑で境界明瞭で可動性良好な腫瘤(しゅりゅう)の触知である。典型的な線維腺腫は,マンモグラフィーでは辺縁明瞭な腫瘤陰影として,超音波検査では境界明瞭で内部エコーが均一な腫瘤陰影として描出される。乳房超音波検査で悪性との鑑別を行うことが重要であるが,超音波ガイド下の針生検を行うと通常は確定診断が得られる。線維腺腫が疑われた場合に悪性を除外するため全例に針生検を行うのはovertreatment(過剰な検査)であるが,経過観察によって後日悪性と判明することもあるので,診断の線引きは臨床判断に患者希望を加味して行うことになる。

  • 治療

線維腺腫の治療は基本的には不要であり経過観察を行うが,経過観察中に増大してきた場合や,病変が3cmを超えているような場合は,葉状腫瘍の可能性を除外する目的や,整容性のために切除生検(腫瘤摘出術)を行う。