乳癌患者さんへの頭皮冷却療法の実施件数が380件、延べ3900回の冷却実績を経て、脱毛抑制効果が高まりました。
10月8日に当院の所属する共済医学会で、当院での周術期乳癌患者さんの化学療法誘発脱毛(CIA)に対する、頭皮冷却の脱毛抑制効果について発表する機会をいただきました。
導入から4年、医師・看護師・薬剤師に加えて院内美容室の美容師にもチームに参加いただき、この10月末で実施件数380件、延べ3900回の冷却実績を重ねることが出来ました。チームとして成熟し質の高いケアを提供できる体制となった結果、脱毛抑制効果が高まり、脱毛した方もその期間が短縮していることをご報告してきました。
当院で導入している頭皮冷却療法は、機械を用いて化学療法前後の長時間頭皮を冷却し続けるもので、国内外のガイドラインで推奨されている周術期化学療法を行う乳癌患者さんの脱毛抑制に対して唯一の対症療法になります。国際シェアNo.1のPAXMAN社の機器を2021年夏に導入し、現在5台体制で運用しています。従来行われていたアイスノンで単に冷やすというもののエビデンスはまだなく、PAXMAN社などの機械を用いる冷却療法の脱毛抑制効果がガイドラインで認められていますが、その煩雑さから国内ではまだ広く浸透していない状況にあります。
そのような背景の中、毎月100件以上を継続して実施することは医療従事者だけでは到底達成できる件数ではなく、病院全体での取り組みの結晶と考えています。これだけの件数を積み重ねている施設は国内で類をみず、また英国PAXMAN本社からも当院頭皮冷却チームの脱毛抑制効果は注目されています。
実際にこの治療を受けて、化学療法中も一度もウィッグが必要なかった患者さんも増えました。一方で頭皮冷却をしても脱毛してしまう患者さんもいらっしゃりますが、全例脱毛から早期に回復し、日常生活を取り戻すまでの時間が早いことは明らかです。またこの治療はまだ保険外診療ですが、この治療を受けた過去の患者さんたちが日常を取り戻したあと、今後の患者さんのためにと動いてくださったおかげで、お住いや働いてらっしゃる地域でがん助成金の対象として広がってきました。
治療を乗り越えて日常を取り戻してくださる姿にいつも力をいただいています。今後の患者さんのためにと尽力いただけることは本当に有難く、これからも正しい情報が広がっていくことにお力いただけると助かります。
病院全体として、患者さんの抱える見えない苦痛にすべての職種・立場で向き合っていくことで安心して治療を受けていただけるよう、今後もいまなしうる最良の乳癌治療、そして最善のケアのすべてを提供できる体制構築に努めてまいります。
