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田村宜子先生

乳がんを疑ったら……押さえるべき診断の流れ【研修最前線】
虎の門病院「初期研修医向け院内合同セミナー」 M3.comを登録済みの方は全文が読めます

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虎の門病院が初期研修医を対象に開催する「虎の門病院研修医向け院内合同セミナー」をレポートするこの企画。今回から、同院乳腺内分泌外科の田村宜子氏による「知ってほしい乳がんのこと、医師として患者さんと向き合うということ」を4回にわたって掲載する。第1回は、乳がんの診断について。治療方針を決めるのに必要な情報がそろうまでの基本的な流れを解説する。

研修医に知っておいてほしいこと
 田村宜子氏 本日は、私たち乳腺内分泌外科の診療現場の現状をお伝えするとともに、多様な個性を持つ私たちがその個性を生かし、医師として、また一人の社会人として育っていくことの大切さを皆さんにお伝えしたいと思います。
 今日お伝えしたいことは3つあります。1つ目は、乳がんの治療の基本について。2つ目は「患者さんと向き合うということ」について。患者さんは、がんの診断を受けて何を思い、何を感じているのか。皆さんがそれを理解するためには、医師としてではなく社会人として、人として、周りの人を大切に思えるかが重要になります。医師としての経験量とは関係ありません。皆さんはそれぞれが親や周りの大人に大切に育てられてきて今があると思いますが、今度はどれだけ患者さんのことを親身になって考えられるかということです。大学で学問として学ぶ医学ではなく、職場で学ぶ医療の実際なのだと思います。
 そして、3つ目は「自分自身ができることは何か」をいつも考えていただきたいということです。研修医の皆さんには、術式や化学療法の内容を決める権限はまだないかもしれません。指導医に言われたことを忠実に実行していくことが今求められていることだと感じてしまうこともあるかもしれませんが、私は今の先生たちにしかできないことがあるといつも実感しています。例えば、患者さんが亡くなったときに、人として自然に一緒に涙を流せるか。涙を流す必要があると言いたいのではなく、まだ医療に慣れていないからこその感覚、視点があるはずです。それを念頭に置いて、チームの中で生き生きと動いていただければと思っています。