なぜ、乳がんは増えているのか
女性ホルモンと乳がん
かつて、日本は先進国の中でも乳がんの少ない国といわれました。しかし、いまでは女性のかかるがんのトップが乳がん。計算方法にもよりますが、多く見積もると一生の間に16人に1人の日本人女性が乳がんになると予測されています。
7~8人に1人の女性が乳がんになるとされるアメリカとくらべればまだ少ないとはいえ、日本での乳がんは増加の一途をたどっています。女性のがんでも子宮頸@頸ルビ:けい@がん(子宮の入り口にできるがん)は減少しているのに、なぜ乳がんが増えているのでしょうか。
その原因の一つとして指摘されているのが、女性のライフスタイルの変化です。乳がんは「ホルモン依存性のがん」といわれ、乳がんの70%はエストロゲン(卵巣ホルモン)の働きで成長します。エストロゲンは卵巣から分泌され、子宮内膜@内膜ルビ:ないまく@の増殖や乳腺の増殖などをコントロールする女性ホルモンで、そのエストロゲンの働きで乳がん細胞も増殖していくのです。
エストロゲンの分泌は、妊娠したり閉経@へいけい@すると低下します。ところが、最近は初潮@しょちょう@が早くなり、逆に閉経が遅くなっているので、それだけ乳腺がエストロゲンの影響を受ける期間が長くなっています。その上、女性の社会進出が進むにつれて高齢出産が増えたり少子化が進み、また出産しない女性も増えています。その結果、エストロゲンの分泌が止まる期間が短くなっているというわけです。
数人の子供を持つのがあたりまえだった時代とは、ホルモン環境がかなり変わってきています。授乳も、乳がんを防ぐ方向に働きます。現代女性のライフスタイルが、乳がんの発生しやすい環境をつくっているともいえます。
閉経後の肥満も危険因子
肥満も、乳がんの発生と深くかかわっています。
かつて、日本人の乳がんは閉経前の女性に多かったのですが、いまでは閉経後の乳がんも増えています。その要因としてあげられているのが、肥満です。
これも、やはり女性ホルモンとの関係です。卵巣からのエストロゲンの分泌は、閉経によって止まります。ところが、閉経後は脂肪細胞で男性ホルモンがエストロゲンに変換されます。そのため、肥満して脂肪細胞の量が多い人は、それだけたくさんエストロゲンがつくられることになります。その結果、閉経後もエストロゲンの作用がつづき、乳がんのリスクが高まるのです。
食生活が豊かになり、更年期以降に肥満する女性も増えてきました。これも、乳がんを増やしている原因の一つと見られています。