質問1

質問1

先日、検診で乳がんが疑われ、その後の針生検でがんと診断されました。左の乳房内に腫瘍が2つあり(それぞれ2センチ、2・5センチほど)、さらに離れたところに1つ、がんらしい腫瘍があるとのことでした。再発の危険性を考えると乳房温存手術はあまりすすめられず、全摘出手術がよいだろうと、主治医に言われています。

このような場合、全摘出手術しかないのでしょうか。温存手術ができる条件はどのように定められているのでしょうか。また、リンパ節切除は必要でしょうか。(55歳 女性)

 

アドバイス1

3箇所に病変があり、そのうちのひとつが離れた場所にあるということなので、乳房全摘の判断はおそらく妥当かと思われます。乳房を温存できるかどうかの判断は、腫瘍を手術的に取りきったあとに美容的な乳房が残せるかどうかが基準になります。仮に3つの腫瘍があってもまとまった場所にあれば乳房温存手術も可能になります。しかしながらかなり離れた場所にあると美容的な乳房を残すことが困難になります。また多発するタイプの乳がんは乳管に沿って乳房内を広汎に広がる傾向があるのも不利な条件になります。術前に抗がん剤を投与して温存療法の可能性を高める方法もありますが、腫瘍の位置関係が変わるわけではないのでこの方の場合はこのアプローチはそれほど有効ではないだろうと思われます。ただ実際には診察してみないとわからないこともありますから、手術法に関して十分な納得をしたいのであれば、セカンドオピニオンを求めることをお勧めします。

リンパ節に関しては術前検査で明らかなリンパ節転移がなければセンチネルリンパ節生検法を行うことが一般的になってきました。センチネルリンパ節生検法とは手術中に最も転移しやすいリンパ節を調べて、これに転移がなければその他のリンパ節を切除しない手術法で、術後の患者さんの後遺症が従来の手術より格段に軽減されています。通常の乳房温存手術の患者さんの場合はセンチネルリンパ節生検法を用いることお勧めしますが、乳がんが広い範囲に多発する場合のセンチネルリンパ節生検の適応に関してはセンチネルリンパ節の決定が不確実で危険と考える意見もあります。新しい技術には不確かな部分も多々ありますので、リスクとメリットの説明を受けた上で、どうされるか最終的には判断されればよいでしょう。

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質問2

ご質問

1年前、右胸の乳がんと診断され、全摘出手術を受けました。その後はホルモン療法を受けています。  現在、乳房の再建手術を考えているのですが、どのような方法があって、費用はどれくらいかかるのでしょうか。また、通常、手術後どのくらいの期間をおいてから行うのが望ましいのでしょうか。(44歳 女性)

 

アドバイス

全摘手術を受けられたあと、40代の方で抗がん剤を行っていないようなので、おそらくリンパ節転移なく、比較的再発のリスクが少ない患者さんと思われます。乳房再建にはインプラント(人工乳腺)を使う方法と筋皮弁(自分の組織の一部)を使う方法があります。手術自体はすぐに行うことができますが、たちの悪い再発が術後2~3年以内に起こる事が多いため、この患者さんのように二期再建を選ばれるなら術後2~3年が経過してから再建を行うのが現実的と思われます。ただ腫瘍の条件がよい方、すなわち再発しなさそうな方の場合は、半年程度を目処に再建手術を行うこともあります。手術法は現在の傷の状況、患者さんの体型、左右のバランスなどを総合的に判断してもっとも適切と判断される方法を決めます。費用に関しては保険でカバーできる部分と保険の適応外になる部分があります。筋皮弁法(腹直筋、広背皮弁術)や乳輪乳頭を反対側から移植する手術は保険適応となりますが、インプラントを使う手術は自費になります。このため保険適応でかつ費用の一定上限を超える部分が還付され格安でできる場合と、自己負担がすべて含めると100万円程度となる場合など、かなり幅があります。通常何回かの手術を含めた処置が必要になり、またトラブル(手術合併症)が起こった時の費用をどうするかという問題もありますから、初回の手術代、材料費だけではなく、細かい部分も事前に確認しておく必要があります。乳がんの初回手術のようにある程度の時間の中で決断しなければならないというプレッシャーはありませんから、体験者の話を含めたさまざまの情報を集め、形成外科医のセカンドオピニオンも十分とって納得の行く形で話しを進めていかれるとよいでしょう。

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