入院前に準備しておきたいこと

入院前の準備

乳がんの治療法は手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法の4つが基本となり、がんの進行度や性質、患者側の条件により治療法を選択します。手術の入院期間は6日から10日間程度が一般的で、それ以外の治療は原則外来で行います。

治療開始の時期

治療開始はできれば1カ月以内に

乳がんには、早い段階で全身転移をするタイプのものもありますが、一般的には比較的ゆっくり進行するがんです。ですから納得いく治療法を選択する時間的余裕はあると考えられています。ただそうはいってもがんは進行性の病気のため、治療開始が遅れることの不安をだれも否定することはできません。できれば、診断がついてから1カ月以内に治療を開始したいものです。ただ設備の整った病院ではそれなりの手術待ちの時間があるため、早めの意思決定も必要となります

針生検や細胞診のためにしこりに針を刺すと、がん細胞が飛び散ったり転移するので、針を刺したら直ちに手術をしないといけないといわれることがあります。しかしこの説にはさほど根拠がなく、あまり気にする必要はないと思います。むしろ針生検によって病理組織学的診断やホルモン受容体、Her2、核異型度、組織異型度などを事前に把握して治療にのぞむことが現在では主流になっています

ところで治療はまず手術を行うのが普通ですが、抗がん剤治療を先に行う場合も増えています(術前化学療法)。腫瘍が大きい場合や、明らかなリンパ節転移がある場合は積極的に術前化学療法が行われています。具体的には外来で抗がん剤を3週間に1回の割合で4サイクル~8サイクル行うことが一般的で、80%以上の奏効率が期待できます。

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治療に専念できるように環境を整える

仕事を持っている人や幼い子どもを育てている人にとって、乳がんの治療のために何日くらい休みをとればいいのかは、予め知っておきたいことです。 手術のために必要な入院日数は、手術の方法や病院によっても異なりますが、通常10日以内です。しかしその後の治療法の決定は手術結果が判明してからになるので、残念ながら手術前から治療スケジュールを決めることはできません。手術結果によっては再手術が必要になることもあり、治療の順番も放射線が先になったり、抗がん剤が先になったりするからです。手術結果、すなわち切除した組織の病理検査の結果がすべて判明するのに10~14日程度かかるので、この時点で治療スケジュールが決まることになります。

放射線治療や抗がん剤の投与は、一般には通院しながら行いますが、抗がん剤の投与後は、疲れたり気分が悪くなるなどで、数日寝込んでしまう人もいれば、案外平気に活動できる人もいます。

多くの方の場合、術後すぐにでも事務的な仕事なら可能と思いますが、通勤ラッシュや長時間の通勤は辛いかもしれません。また退院後の治療スケジュールも不確定なため、入院期間も含めて1カ月程度の休暇はとっておきたいところです。退院後も放射線治療や抗がん剤投与のための通院の可能性が高いので、そのことも職場の責任者に説明しておき、必要なときに休みをとれる準備をしておきましょう。

家事は、退院後すぐから可能ですが、最初は家族に分担してもらいながら、徐々に元に戻していくようにしましょう。母親や姉妹など、気兼ねなく頼める人がいるようであれば、1週間くらい援助してもらうと、気持ちの上でも楽になります。

入院の費用がどのくらいかかるのかは重要な問題ですが、治療方法、入院日数、差額ベッド代の有無などで変わってきます。気がかりな点は遠慮なく質問して、気持ちよく治療に臨めるようにしましょう。 また、入院申し込み書、手術の同意書、誓約書、健康保険証などの必要書類、病院に持ち込む品物については、印刷物を渡されることが多いでしょう。入院中に必要な品物は、洗面用具や衣類などですが、大きな病院であれば、たいていの必要品は売店にそろえてあります。絶対忘れ物をしてはいけないなどと、神経質になることはありません。