PI3K経路とは

通常、細胞の生存・増殖と、タンパク質合成を促進する経路です。この経路が遺伝子異常により活性化されると、腫瘍の増殖、癌を誘発する他経路との連携、治療抵抗性の獲得などの原因となります。乳癌ではホルモン療法やHER2療法に対する抵抗性の獲得に大きな役割を果たしており、この経路をコントロールすることで治療の大きな進展が期待されています。

2010 年12月にサンアントニオ(USA)で開催された国際会議のトピックスから(今回の会議で最も注目を集めた2つのテーマから)

<1>dual blockade effective

HER2シグナル伝達経路を複数の方法でブロックする方が、単独のブロックより有効だということで、具体的にはトラスツヅマブ+ラパチニブ>トラスツヅマブ あるいはトラスツヅマブ+pertuzumab>トラスツヅマブということが見えてきたということです。これらはいずれも高額の分子標的治療薬ですが、HER2シグナル伝達経路の完全ブロックという方法を当面は目指して研究が進むと思われます。(GEPARQUINTO Trial, Neo-ALTTO Trial, NEOSPHERE Trial)

<2>Azure trial : Negative Results

オーストリアのトライアル(ABCSG-12、1800名の患者さんが参加)の結果でゾメタの再発抑制効果が報告され、非常に期待されていましたが、さらに大規模な3360名の試験結果(Azure trial)では効果が否定されました。詳細なデータ解析はこれからですが、ゾメタを術後補助療法として使うことはまだまだ研究段階であることがわかりました。
<The Z0011 trialについて>