乳房温存療法
乳がん治療における乳房温存療法(BCT)について
<要旨>乳がんの乳房温存療法(BCT)は、外科手術である乳房温存手術(BCS)に、術後の放射線治療を組み合わせた「治療パッケージ」を指します。過去の臨床試験により、早期乳がんでは温存(手術+放射線)と全摘で生存率が同等であることが示され、根治性と整容性を両立する標準治療として確立しました。
BCTの適応は、①腫瘍が限局し、画像で広範な広がり(広範石灰化など)が乏しいこと、②乳房サイズとのバランス上、切除後の変形が過度になりにくいこと、③断端陰性が見込めること、④術後放射線が実施可能であること、⑤本人に温存希望があること、などが基本です。一方、多中心性病変、広範石灰化、追加切除でも断端陽性が続く場合、放射線治療ができない場合(既照射歴や通院困難を含みます)などは原則として適応外となり、乳房全摘が推奨されます。腫瘍が大きい、妊娠中、活動性の膠原病、BRCA変異などは相対的禁忌で、状況により術前化学療法で縮小して温存を目指す選択肢もあります。
BCSは単なる「しこり摘出」ではなく、マーキング、センチネルリンパ節生検、安全域を伴う部分切除、術中の断端評価、腫瘍床クリップ留置、欠損部の修復(オンコプラスティック手技)までを含め、根治性と整容性を高いレベルで両立させる手術です。BCTの成否を決める鍵が放射線治療であり、温存乳房内再発を大きく低下させ、全摘と同等の治癒率を担保します。現在は3〜4週程度の短期照射が主流で、必要に応じて腫瘍床へのブースト照射や、左乳がんでは心臓被曝を減らすDIBHなどが用いられます。副作用は皮膚炎や倦怠感が中心で、多くは通院しながら対応可能です。
予後は全摘と同等ですが局所再発は数%〜10%程度起こり得るため、定期的なフォローが重要です。万が一再発した場合でも、その時点で全摘を行うことで根治を目指せます。最終的な治療選択は「温存できるか」だけでなく、再発への不安、生活背景、整容性の希望、遺伝リスクなどを踏まえた個別化(共有意思決定)が重要です。
乳がんにおける**乳房温存療法(Breast-Conserving Therapy: BCT)および乳房温存手術(Breast-Conserving Surgery: BCS)**について、その定義、適応、手術の詳細、放射線治療の重要性、そして予後について包括的に解説します。
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乳房温存療法(BCT)とは
まず用語の整理として、**「乳房温存手術」は外科的な手技そのものを指し、「乳房温存療法」**は手術とその後の放射線治療を組み合わせた治療全体のパッケージを指します。
かつて乳がん治療の主流は、乳房全体と胸の筋肉を切除する「ハルステッド手術(乳房切除術)」でした。しかし、多くの臨床試験の結果、早期乳がんにおいては**「乳房を温存しても、全摘出しても、生存率(命が助かる確率)に差はない」**ことが証明されました。これにより、整容性(見た目の美しさ)と根治性(がんを治すこと)の両立を目指す乳房温存療法が、現在の標準治療の一つとなっています。
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治療の適応(どのような人が受けられるか)
乳房温存療法(手術+放射線治療)を受けるためには、**「がんを確実に治すこと(根治性)」と「乳房の形をきれいに保つこと(整容性)」**の両方が達成できる見込みが必要です。
日本乳癌学会のガイドラインや臨床現場の判断基準に基づき、適応となる条件(受けられる人)と、適応とならない条件(難しい、または受けるべきでない人)を整理して解説します。
- 適応となる条件(推奨されるケース)
基本的には、**「しこりを取っても乳房の形が崩れすぎず、かつ放射線治療が可能で、がんを取り残さない手術ができる」**ことが大前提です。
- 腫瘍の大きさが適切であること
- 目安として腫瘍径が 3cm以下 であることが一般的です。
- ただし、これは絶対的な数字ではなく、**「乳房の大きさとしこりの大きさのバランス」**で決まります。乳房が大きければ、3cmを超えるしこりでもきれいに温存できる場合があります。
- しこりが限局している(広がっていない)こと
- がんが乳房全体に散らばっておらず、一箇所に留まっている状態です。
- 画像診断で広範な広がりがないこと
- マンモグラフィで広範囲な石灰化(がんのサイン)が見られないこと。
- MRIや超音波で、病変が広範囲に及んでいないことが確認されていること。
- 断端陰性が確保できること
- がんを周囲の正常組織ごとくり抜いた際、切り口(断端)にがん細胞がない状態にできると予測されること。
- 本人の希望
- 患者さん自身が「乳房を残したい」と強く希望していること。
- 適応とならない条件(絶対的禁忌)
以下の条件に当てはまる場合、温存手術を行うと再発のリスクが高まる、または放射線治療ができないため、原則として**乳房全摘術(+再建術)**が推奨されます。
- 多中心性の病変(がんが離れた場所に複数ある)
- 同じ乳房内の離れた場所(異なる領域)に2つ以上のがんがある場合、それらをすべてくり抜くと乳房の形が著しく損なわれる上、見えないがんがその間に潜んでいる可能性が高いためです。
- 広範な石灰化を伴う場合
- マンモグラフィで乳房の広い範囲に微細な石灰化が散らばっている場合、がんが広範囲に広がっている可能性が高く、部分的な切除では取りきれないためです。
- 断端陽性が続く場合
- 温存手術を行ったものの、病理検査で切り口にがんが見つかり、追加切除を行ってもまだがんが残っている場合は、全摘に変更する必要があります。
- 術後の放射線治療ができない場合
- 温存療法は「手術+放射線」でセットです。通院が困難、または身体的な理由で放射線治療が受けられない場合は適応外となります。
- 過去に胸部への放射線治療歴がある場合
- 同じ場所に二度、大量の放射線を当てることは副作用のリスクが高すぎるため、原則として行えません。
- 慎重な判断が必要な条件(相対的禁忌)
医師と相談の上で判断される、あるいは条件付きで可能となるケースです。
- 腫瘍径が大きいが乳房が小さい場合
- 物理的には切除できても、乳房が大きく変形してしまう可能性がある場合です。この場合、無理に温存するよりも全摘して再建したほうが、見た目がきれいになることがあります。
- ※解決策: 手術前に抗がん剤治療(術前化学療法)を行い、しこりを小さくしてから温存手術を行う方法があります。
- 妊娠中である場合
- 妊娠中は胎児への影響があるため、放射線治療が行えません。
- 出産後に放射線治療を行うスケジュールが組める場合(妊娠後期など)は温存可能なこともありますが、基本的には全摘が安全な選択肢となることが多いです。
- 膠原病(こうげんびょう)の合併
- 特に「強皮症」や「全身性エリテマトーデス(SLE)」などの活動性の膠原病がある場合、放射線治療によって皮膚が硬くなったり、壊死したりする重い副作用が出るリスクが高いため、慎重に判断されます。
- 遺伝性乳がん(BRCA遺伝子変異がある場合)
- 温存手術自体は可能ですが、乳房内再発のリスクや、残した乳房に新たながんができるリスクが一般的な乳がんよりも高いため、予防的な意味を含めて全摘(リスク低減乳房切除術)が推奨されることがあります。
まとめ
- 温存できる: しこりが小さく、一箇所で、放射線治療ができる人。
- 温存できない: しこりが広範囲、複数ある、または放射線が当てられない人。
- 相談が必要: しこりが大きい、妊娠中、膠原病、遺伝性のリスクがある人。
現在は**「術前化学療法」**の進歩により、以前なら全摘と言われた大きさの腫瘍でも、薬で小さくして温存できるようになるケースが増えています。ご自身の状況がどの条件に当てはまるか、主治医とよく相談することが大切です。
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乳房温存手術(BCS)の手技と詳細
乳房温存手術(Breast-Conserving Surgery: BCS)は、単に「しこりを取る」だけでなく、**「がんの根治性(取り残さない)」と「整容性(形の美しさ)」**を高度なバランスで成立させるための手術です。
手術の具体的な流れと、その中で行われる重要な手技について詳細に解説します。
手術の全体的な流れ
- マーキング(デザイン)
- センチネルリンパ節生検(腋窩操作)
- 乳房部分切除(腫瘍の切除)
- 術中迅速病理診断(断端の確認)
- 欠損部の修復(オンコプラスティック手技)
- 閉創・クリップ留置
- 切開線のデザイン(アプローチ)
手術の傷跡が目立たないように、慎重に皮膚を切る場所(切開線)を決めます。
- 直上切開: しこりの真上の皮膚を切る方法。最も確実ですが、場所によっては傷が目立ちます。
- 乳輪縁切開: 乳輪の周囲(色が変わる境目)を切る方法。傷跡が非常に目立ちにくいですが、しこりが乳輪から遠い場合は難しいことがあります。
- 腋窩線切開: 脇の下のラインに合わせて切る方法。外側のしこりの場合に有効で、腕を下ろすと傷が見えなくなります。
- センチネルリンパ節生検(腋窩の操作)
乳房の手術に取り掛かる前、または同時に、脇の下(腋窩)のリンパ節への転移を確認します。
- 色素法・RI法: 手術直前または手術中に、乳輪や腫瘍の近くに「青い色素」や「微量の放射性同位元素(RI)」を注射します。これらがリンパ管を流れて最初に到達するリンパ節(センチネルリンパ節)を探し出します。
- 摘出と検査: 1〜2個のセンチネルリンパ節を取り出し、手術中に顕微鏡検査(術中迅速診断)を行います。
- 転移なし: その他のリンパ節は温存します(郭清省略)。
- 転移あり: 転移の個数や程度により、追加で周囲のリンパ節を切除(郭清)するか、術後の放射線や薬物療法で制御するかを判断します。
- 乳房部分切除(腫瘍の切除と安全域)
ここが手術のメイン部分です。がん細胞を取り残さないよう、しこりそのものだけでなく、周囲の正常乳腺を含めて切除します。
- 安全域(サージカルマージン): しこりの周囲に、目に見えない微細ながん細胞が浸潤している可能性があります。そのため、しこりの端から1〜2cm程度の正常組織をつけて、一回り大きく切除します。
- 切除の形状:
- 円状切除: しこりを中心にまんじゅう型にくり抜く方法。
- 扇状切除: 乳頭を中心として、扇形に乳腺を切除する方法。乳管の走行に沿ってがんが広がるタイプに適しています。
- 術中迅速病理診断(断端の評価)
切り取った組織の「切り口(断端)」にがん細胞が露出していないか、手術中に病理医がチェックします。
- 断端検索: 切り取った組織の全周(頭側、足側、内側、外側、深部など)を調べます。
- 判定:
- 陰性(クリア): がんが取り切れているため、次のステップへ進みます。
- 陽性: 切り口にがんがあるため、その部分の乳腺を追加で切除します。追加切除でも取りきれないほど広がっている場合は、全摘手術に切り替えることもあります。
- クリップ留置(放射線治療への準備)
腫瘍を取り除いた後の空洞(腫瘍床)に、チタン製の小さなクリップ(金属マーカー)を数個留置します。
- 目的: 手術後の放射線治療の際、**「元々がんがあった場所」**を正確に特定するためです。これにより、再発しやすい部分に集中的に放射線を当てる「ブースト照射」が可能になります。
- 欠損部の修復(オンコプラスティック・サージャリー)
組織を切り取ると、乳房内に空洞(欠損)ができ、そのまま皮膚を縫うと乳房が凹んだり(えくぼ変形)、乳頭が変な方向を向いたりします。これを防ぐために形成外科的な手技を用います。
- 欠損充填(けっそんじゅうてん): 周囲に残っている正常な乳腺組織や脂肪組織を剥離(はがして動かすこと)し、空洞部分に移動させて埋め合わせます(乳腺皮弁など)。
- 乳頭位置の調整: 変形によって乳頭の位置がずれることが予想される場合、あらかじめ皮膚のデザインで調整します。
- 閉創(傷を閉じる)
- ドレーン(排液管): 切除範囲が広い場合やリンパ節郭清を行った場合は、体液や血液が溜まらないように細い管(ドレーン)を留置することがありますが、通常の温存手術では入れないことも多いです。
- 縫合: 皮膚の下を溶ける糸で縫い合わせ、表面はテープで固定するか、医療用ボンドで接着することが一般的です(抜糸の必要がない方法が増えています)。
まとめ
現代の乳房温存手術は、単なる「部分切除」ではありません。
- センチネル生検で不要なリンパ節切除を避ける。
- 安全域を確保してがんを取り切る。
- オンコプラスティック手技で、切除後の空洞を埋めて形を整える。
この3つのステップを丁寧に行うことで、**「がんはしっかり治しつつ、手術したと気づかれないようなきれいな胸」**を目指すのが標準的な手技となっています。
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術後放射線治療の重要性
乳房温存療法において、手術後の放射線治療は**「画竜点睛(がりょうてんせい)」**とも言える非常に重要なプロセスです。手術で「目に見えるがん」を取り除き、放射線で「目に見えないがん」を叩くことで初めて治療が完結します。
その重要性と、具体的な治療スケジュール・方法について詳しく解説します。
- 術後放射線治療の重要性
なぜ手術できれいに取ったのに、放射線を当てる必要があるのでしょうか?
① 「温存乳房内再発」を劇的に減らす
温存手術では、目に見えるしこりを安全域(周囲の正常組織)を含めて切除しますが、乳房内の離れた場所に、検査でも写らないほどの微細ながん細胞が潜んでいる可能性があります。
- 放射線なしの場合: 乳房内での再発率は高くなります(研究によりますが30%前後とも言われます)。
- 放射線ありの場合: 再発リスクを約1/3〜1/4に低減させます(10年再発率を数%〜10%程度に抑える)。
② 乳房全摘術と同等の生存率を担保する
「乳房温存療法(手術+放射線)」の生存率は、「乳房全摘術」の生存率と変わりません。しかし、これは放射線治療を行うことが前提です。放射線を省略すると、全摘術よりも生存率が下がってしまう可能性があるため、原則としてセットで行います。
- 治療の開始時期と期間
開始のタイミング
- 通常: 手術の傷が癒えるのを待ち、**術後4〜6週間(約1ヶ月後)**を目安に開始します。
- 抗がん剤(化学療法)が必要な場合: 先に抗がん剤治療を半年ほど行い、それが終わってから放射線治療を開始します(抗がん剤と放射線は同時に行わないのが一般的です)。
- ホルモン療法が必要な場合: 放射線治療と同時に開始、あるいは放射線終了後から開始します。
通院期間(スケジュール)
以前は5〜6週間かかるのが標準でしたが、現在は期間を短縮する方法が主流になりつつあります。
- 寡分割(かぶんかつ)照射(現在の標準)
- 期間: 約3週間〜4週間(週5回×15〜16回など)
- 特徴: 1回あたりの線量を少し増やし、回数を減らす方法です。治療効果や安全性は従来の長期法と同等であることが証明されており、通院負担が軽いため推奨されています。
- 通常分割照射(従来の方法)
- 期間: 約5週間〜6週間(週5回×25〜30回)
- 特徴: 1回2グレイで時間をかけて照射します。乳房の形状や特定の条件によっては、現在もこちらが選ばれることがあります。
- 具体的な照射方法と手順
放射線治療は、リニアック(リニアック)という大型の装置を使って行います。
治療の準備(CTシミュレーション)
治療開始の前に、CTを撮影して計画を立てます。
- 固定具: 毎回同じ姿勢(仰向けで腕を上げたポーズ)が取れるよう、自分専用の固定具を作ります。
- マーキング: 照射位置がずれないよう、皮膚にインクで印をつけます(消えないように注意が必要です)。
全乳房照射(ベースとなる治療)
残した乳房全体にまんべんなく放射線を当てます。これにより、乳房内のどこかに潜んでいるかもしれない微小ながんを死滅させます。
ブースト照射(追加照射)
再発リスクが高いと考えられる場合、全乳房照射が終わった後に、**「元々しこりがあった場所(腫瘍床)」**だけにピンポイントで追加照射を行います。
- 対象: 50歳以下(閉経前)の人、断端が近い人、悪性度が高い人など。
- 期間: 通常の照射にプラスして、1週間程度(4〜5回)追加されます。手術中に留置したクリップを目印に行います。
左乳がんの場合の工夫(深吸気息止め照射:DIBH)
左側の乳房の下には心臓があります。放射線が心臓に当たると、将来的に心疾患のリスクがわずかに上がることがわかっています。 これを防ぐため、**「息を大きく吸って止める」**状態で照射する方法が普及しています。息を吸うと肺が膨らみ、心臓と乳房の距離が離れるため、心臓への被曝を大幅に減らすことができます。
- 痛みと副作用
治療中の感覚
放射線自体に熱や痛みはありません。レントゲン撮影と同じような感覚で、ベッドに寝ているだけで数分で終わります。
急性期副作用(治療中〜終了直後)
- 皮膚炎: 治療開始から2〜3週間後くらいから、照射した部分が日焼けのように赤くなり、ヒリヒリしたり痒くなったりします。終了後1〜2週間で皮がむけて治っていきます。
- 倦怠感: 「放射線宿酔(しゅくすい)」と呼ばれ、なんとなく体がだるいと感じることがあります。
晩期副作用(数ヶ月〜数年後)
- 放射線肺臓炎: 100人に1人程度、肺の一部に炎症が起きて咳や微熱が出ることがあります(ステロイド剤などで治療します)。
- 乳房の変化: 長い年月の間に、照射した乳房が少し硬くなったり、汗をかかなくなったりすることがあります。
まとめ
乳房温存療法における放射線治療は、「念のため」というレベルではなく、**「手術の一部」**と言えるほど不可欠な治療です。
- 目的: 見えないがんを叩き、乳房内再発を防ぐ。
- 期間: 現在は3週間〜4週間の短期照射が主流。
- 生活: 副作用は主に皮膚症状で、仕事や家事を続けながら通院可能です。
「毎日通院するのは大変」と感じるかもしれませんが、この仕上げを行うことで、自分の胸を残しながら、全摘と同じだけの「治る確率」を手に入れることができます。
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治療成績と予後
生存率(生存期間)
前述の通り、乳房温存療法と乳房全摘術では、生存率に差はありません。これは、乳がんが局所の病気であると同時に、微細な転移を起こしやすい全身病の側面も持つため、局所の手術方法の違いよりも、全身療法(薬物療法)や早期発見が予後に影響するためです。
局所再発率
乳房内での再発(局所再発)については、全摘術(ほぼ0%に近い)に比べ、温存療法ではわずかながらリスクがあります(10年で数%〜10%程度)。しかし、万が一局所再発した場合でも、その時点で残りの乳房を切除(全摘)することで、根治が可能です。定期的な検診を受けていれば、過度に恐れる必要はありません。
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メリットとデメリットのまとめ
| 特徴 | 乳房温存療法(BCT) | 乳房全摘術(+再建術) |
| 最大のメリット | 自分の乳房、皮膚、乳頭を残せる。
ボディイメージの喪失が少ない。 |
局所再発の不安が非常に少ない。
放射線治療を省略できることが多い。 |
| デメリット | 放射線治療への通院が必要。
わずかながら乳房内再発のリスクがある。
変形やひきつれが残る場合がある。 |
乳房の喪失感(再建しない場合)。
再建する場合、手術が大掛かりになる。
皮膚の感覚が鈍くなる。 |
| 手術時間 | 短い(1〜2時間程度) | 長い(再建を含めるとさらに長時間) |
| 身体的負担 | 比較的小さい | 比較的大きい |
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合併症と副作用
手術によるもの
- 出血・感染: 創部の治癒遅延など。
- 漿液腫(しょうえきしゅ): 切除した空間に浸出液がたまること。注射器で抜く処置が必要な場合があります。
- 乳房の変形: 切除量が多い場合や、腫瘍の場所によっては、えくぼのような凹みや乳頭の偏位が起こることがあります。
放射線によるもの
- 皮膚炎: 日焼けのような赤み、ヒリヒリ感(治療終了後に改善します)。
- 肺臓炎: 稀に放射線が肺にかかり、咳や発熱が出ることがあります(1%程度)。
- 乳房の硬化・萎縮: 長期間経過後に、照射した乳房が少し硬くなったり縮んだりすることがあります。
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結論:個別化医療の時代へ
乳房温存療法は、科学的根拠(エビデンス)に裏打ちされた安全で標準的な治療法です。
しかし、「温存できるか(Can)」と「温存すべきか(Should)」は別の問題です。
例えば、遺伝性乳がん(BRCA変異陽性など)のリスクが高い場合や、患者さん自身が「再発への不安をゼロにしたい」と強く願う場合は、温存が可能であっても全摘(あるいは予防的切除)を選択することもあります。
最終的な治療方針は、がんの医学的な状況だけでなく、患者さんのライフスタイル、価値観、整容性への希望などを総合的に考慮し、主治医と十分に話し合った上で決定されるべきものです(シェアード・デシジョン・メイキング)。
<2025年12月虎の門病院乳腺内分泌外科>

<以下は、旧版の内容です>
乳房温存療法(breast-conserving therapy, BCT)は、乳がん治療において乳房全体を切除することなく、がん病変のみを摘出する治療法です。この方法は、乳房の外観を維持しながら、がんを根治することを目的としています。乳房温存療法は、手術と放射線療法の組み合わせで行われ、患者の生活の質(QOL)を高めるための重要な治療法の一つとされています。ここでは、乳房温存療法の基本的な概念、適応基準、治療の流れ、利点とリスク、さらには予後やフォローアップについてまとめます。
1. 乳房温存療法の概要
1.1 乳房温存療法とは
乳房温存療法とは、乳房のがんを外科的に切除する際、がんの病変部位だけを取り除き、乳房自体はできるだけ温存することを目指す治療法です。乳房部分切除術(lumpectomy)や広範囲部分切除術(quadrantectomy)とも呼ばれ、これに加えて、術後に放射線療法を行い、残存する可能性のあるがん細胞を根絶することが標準的なプロトコルとなっています。
この治療法は、1960年代から1970年代にかけて広く研究され、乳房全摘出術と同等の治療効果を持ちながら、患者の乳房を温存できることが証明されました。以来、早期乳がんの治療として広く採用されてきました。
1.2 乳房温存療法の目的
乳房温存療法の主な目的は、がんを完全に取り除き、乳がんの再発リスクを最小限に抑えながら、乳房の外観や形状を保つことです。これにより、患者の心理的なストレスや術後の生活の質が向上することが期待されます。乳房全摘出に比べて、身体的な負担が少なく、患者が自分の乳房を維持できるため、心理的な満足度も高いとされています。
2. 乳房温存療法の適応基準
乳房温存療法は、すべての乳がん患者に適用できるわけではなく、いくつかの適応基準が存在します。治療の成功には、がんの進行具合や乳房の大きさ、患者の全体的な健康状態などが影響します。
2.1 腫瘍の大きさと位置
乳房温存療法の最も重要な適応基準の一つは、腫瘍の大きさと位置です。通常、腫瘍が乳房に局所的に存在し、乳房内に限局している場合に適応されます。腫瘍が小さい場合や、乳房の一部に局在している場合は、がんを十分に切除しながらも乳房の形状を維持できる可能性が高くなります。
腫瘍が大きい場合や乳房内に広範に広がっている場合は、乳房温存療法が困難になることがありますが、化学療法を先行して行い、腫瘍を縮小させることによって温存療法が可能になることもあります。
2.2 多発性腫瘍
乳房内に複数の腫瘍が存在する場合、温存療法は困難になることがあります。しかし、腫瘍が同じ乳房の限られた範囲にある場合は、適切な外科的切除が可能なケースもあります。
2.3 患者の年齢と全身状態
乳房温存療法は、患者の年齢や健康状態も考慮されます。高齢者で全身状態が悪い場合、手術や放射線療法による合併症のリスクが高まるため、他の治療法が検討されることがあります。一方で、比較的若い患者や健康状態が良好な患者は、乳房温存療法を選択することが一般的です。
2.4 放射線療法の適応
乳房温存療法では、手術後に放射線療法を行うことが標準治療です。放射線療法は、乳房に残っているかもしれない微小ながん細胞を破壊し、再発リスクを抑えるために行われます。しかし、何らかの理由で放射線療法が受けられない患者(例えば、妊娠中の患者や以前に放射線治療を受けた患者など)には、乳房温存療法が適さないことがあります。
2.5 遺伝性乳がんのリスク
BRCA1またはBRCA2遺伝子の変異を持つ患者など、遺伝的に乳がんリスクが高い場合、乳房温存療法ではなく、乳房全摘出術が推奨されることがあります。これにより、将来的な再発リスクを大幅に減少させることが期待されます。
3. 乳房温存療法の手術と治療の流れ
3.1 外科的切除(乳房部分切除)
乳房温存療法の基本は、腫瘍とその周囲の正常組織の一部を外科的に切除することです。がんが完全に取り除かれるためには、がん組織の**周囲に十分なマージン(余白)**を持って切除することが求められます。このマージンが不十分な場合、再手術が必要となることがあります。
外科的には、腫瘍の位置や大きさに応じて切開が行われ、できるだけ乳房の形を損なわないように配慮されます。乳房の形状が大きく変わる場合には、形成外科的な技術を用いて乳房の形を整えることもあります。
3.2 センチネルリンパ節生検
乳がん手術では、がんの転移を評価するために、センチネルリンパ節生検が行われます。センチネルリンパ節とは、がんが最初に到達するリンパ節のことで、このリンパ節にがん細胞が転移しているかどうかを確認することで、がんの広がりを評価します。
センチネルリンパ節ががん陰性であれば、追加のリンパ節摘出は不要です。一方、転移が確認された場合は、さらなるリンパ節の切除が検討されます。
3.3 放射線療法
乳房温存療法の手術後には、必ず放射線療法が行われます。放射線療法は、手術で取り除けなかったかもしれないがん細胞を破壊し、局所再発のリスクを大幅に減少させます。
通常、外部照射という方法で、放射線が乳房全体または部分的に照射されます。治療期間は数週間から6週間程度が一般的です。放射線の照射は、日常生活に大きな影響を与えないことが多いですが、照射部位の皮膚に軽い火傷や赤みが生じることがあります。
4. 乳房温存療法の利点とリスク
4.1 乳房温存療法の利点
乳房温存療法の最大の利点は、乳房を失わずにがん治療を行える点です。多くの女性にとって、乳房は身体的な外見の一部であり、温存できることで心理的な満足感が得られます。加えて、全摘出術に比べて手術の侵襲が少なく、回復も早い傾向があります。
また、乳房温存療法を受けた患者の多くが、乳房全摘出術を受けた患者と同等の生存率を得ていることが、複数の臨床試験で確認されています。このため、早期乳がんの治療においては、乳房温存療法が第一選択となることが多いです。
4.2 乳房温存療法のリスクとデメリット
一方で、乳房温存療法にはいくつかのリスクやデメリットも存在します。
- 再発のリスク:乳房温存療法では、乳房が温存されるため、残存する乳腺組織にがんが再発する可能性があります。そのため、再発リスクを最小限に抑えるために、放射線療法が不可欠です。
- 放射線療法の副作用:放射線療法によって、皮膚の炎症、疲労感、乳房の変形や硬化が起こることがあります。特に、乳房の形が変わることで、左右のバランスが崩れることがあります。
- 再手術の可能性:腫瘍切除後にマージンが不十分と判断された場合、再手術が必要になることがあります。この再手術は、患者に追加の負担をもたらす可能性があります。
5. 乳房温存療法の予後とフォローアップ
5.1 予後
乳房温存療法を受けた患者の予後は、乳房全摘出術を受けた患者とほぼ同等です。特に、早期乳がんの患者では、適切な放射線療法を併用することで、10年生存率は非常に高く、再発リスクも低く抑えられます。
しかし、乳房温存療法では、術後も乳房に残る乳腺組織に再発が生じる可能性があるため、再発を早期に発見するための定期検診が重要です。
5.2 フォローアップ
乳房温存療法後のフォローアップは、がん再発や新たな乳がんの発生を監視するために行われます。通常、以下のようなフォローアップが推奨されます。
- 定期的なマンモグラフィー:乳房温存療法を受けた患者は、年に1回のマンモグラフィー検査が推奨されます。これにより、乳房内に再発があるかどうかを早期に発見することができます。
- 臨床診察:医師による定期的な乳房の診察が行われ、乳房やリンパ節に異常がないか確認されます。
6. まとめ
乳房温存療法は、乳房を温存しながら乳がんを治療できる効果的な手術法であり、早期乳がんの治療において第一選択となることが多いです。この療法は、乳房の外見を保つことができるため、患者の心理的な満足度や生活の質を向上させるという点で非常に重要です。
しかし、放射線療法との併用が必要であり、再発のリスクを常に考慮する必要があります。患者は、医師と十分に相談し、自分に最適な治療法を選ぶことが大切です。また、術後のフォローアップをしっかりと行うことで、再発のリスクを最小限に抑えることができます。

乳房温存療法
大切な断端検査
乳房温存療法は、乳房を残してがんの病巣とその周囲だけを切除する方法で、現在の乳がん手術の中心になっています。
最近は、乳輪@にゅうりん@に沿って切開し、そこからがんを摘出@てきしゆつ@するなど、外見的にほとんど傷痕がわからない工夫も進んでいます。実際には、安全域を見込んで、周囲に1~2センチほどのゆとりをもってがんの病巣をくり抜くように切除します。乳頭部を中心に、扇型に乳房を部分切除する方法(乳房扇状部分切除術)が行われることもあります。
乳房温存療法の目的は、第一に、まずがんを取りきること、そして乳房を元の形に近い状態で残すことです。当初、特に日本では、がんの取り残しと局所再発を危ぶむ声もありましたが、現在は、放射線療法と併用すれば、治療成績は乳房切除術と変わらないことが認められています。
しかし、乳腺を部分的に切除する手術なので、取り残しを防ぐためには、がんの広がりを正確に把握することが必要です。そのため、超音波検査やマンモグラフィ、造影剤を使ったMRI検査(ガドリニウム造影MRI検査)などを行います。検査機器の性能も向上しているので、かなり内部の状況を把握できるようになりました。
しかし、それでもがんの広がりを外から正確にとらえることは困難です。そのため、手術で摘出した組織の端(切り口)を顕微鏡で調べ、がん組織の遺残の有無を調べる「断端@だんたん@検査」を行います。断端検査では、切除した組織の断面やその周辺にがんがないかどうかをチェックします。がんが見つかれば、断端陽性といい、乳房にがんが残っている可能性が高いと考えられます。
術後の放射線治療が必須
もう一つ、重要なのが放射線治療です。乳房温存療法は、放射線治療とセットで行われる治療法です。
1970年代から80年代にかけて世界で行われた大規模な臨床試験では、断端検査が陰性、つまり手術で一応がんが取りきれたと判断できるケースでも、放射線照射を行わないと、約40%もの人に乳房内の局所再発が起こると報告されています。これでは、乳房全摘術と同等の手術とはいえません。しかし、手術後に乳房に放射線を照射すると、乳房内再発率は約10%にまで減少しました。
放射線の照射で、再発を100%抑えることはできませんが、再発率を約3分の1に減らすことができます。これは、検査ではとらえ切れない乳房に遺残したがん病巣を放射線がたたいてくれるからです。
したがって、乳房温存手術後には放射線治療が必須なのです。放射線照射は、外来通院で行われます。温存した乳房だけではなく、脇の下のリンパ節に転移がたくさんあった場合には、胸壁や鎖骨の上、頸の付け根部分にも放射線を照射します。詳細は、放射線治療のページを参照してください。
高齢者の場合には、比較的乳房内への再発が少ないこと、また放射線治療による合併症のリスクと余命を秤@はかり@にかけ、放射線照射が省かれることもあります。しかし、ふつうは放射線照射が必須と考えてください。乳房内の局所再発率が低下することで、生存率も高まると考えられています。
乳房温存療法の方法
乳房温存療法の適応
大きさより乳房とのバランス
では、どの程度の乳がんまでならば、乳房温存療法が受けられるのでしょうか。
日本では乳房温存療法の導入初期に3センチ以下のがんまでが適応とされた時期もありました。経験が増えるにつれこの枠組みは一応参考程度となり、がんを確実に取りきった後に、美容的な乳房が残せるかどうかが、乳房温存療法適応の基準とされるようになりました。
同じ4センチのがんといっても、乳房の大きさや、しこりのできた場所などによって術後の変形の程度が大きく異なるからです。
がんを小さくして乳房温存
また、現在は術前化学療法という方法も用いられるようになりました。術前抗がん剤には薬剤の効果判定などのいくつかの目的がありますが、がんが大きすぎて乳房温存療法の対象として難しい人に対して行い、乳房温存が可能にすることもその目的の一つです(化学療法の項参照)。
適応を選べば抗がん剤を投与することで、80~90%の人はがんが半分以下に縮小します。特にHER2陽性タイプ、トリプルネガティブタイプ、ルミナルBタイプには効果が期待できます。一方ルミナルAタイプには術前抗がん剤の有用性が明らかではないため通常は行われず、術前ホルモン療法が注目されています。
術前ホルモン療法は閉経後の患者さんには臨床現場でもケースバイケースで行われるようになりまし。ただ閉経前の患者さんに対しては臨床試験ベースで行うべき実験段階にあると現在はまだ考えられています。
術前療法は大きなしこりを小さくすることは可能ですが、乳房の中にがんの病巣が広範囲に広がっていたり、多発している場合は、結局乳房切除が必要になります。この場合は乳房温存を目的とした術前療法は避け、乳房切除を行い、美容的な観点からは乳房再建手術の方が望ましいと考えられています。
乳房温存に不向きな人
乳房温存療法が不向きなケースというのはどういう場合か、あらためて整理してみましょう。これをまとめたのが上の表です。
●片側の乳房に複数のがんがある
●がんが広範囲に広がっている
● 妊娠中の人
● 皮膚筋炎、多発筋炎などの膠原病の人
● 以前に、手術をする側の乳房や胸郭に放射線照射を受けたことがある人
また、患者さん自身が放射線照射を希望しない場合や、乳房とがんの大きさのバランスが悪い場合にも、乳房温存療法は適応となりません。
乳房温存療法後の再切除と術後補助療法
断端陽性は再手術
乳房温存療法では、がんが取りきれたかどうかを判断するために、断端検査を行います。
切除した組織の端や、その周辺にがん病巣がないかどうかをチェックします。断端検査は、乳房内再発、つまり残した乳房にがんが再発する可能性を見る重要な検査です。この検査で陽性と出た場合は、もう一度手術を行い、断端陰性を目指します。
断端陽性で追加の切除が乳房全摘になってしまう場合は、通常行われる放射線治療に、さらに放射線照射を追加する(ブースト照射)場合もあります。
無理な乳房温存手術をするよりは、乳房再建手術を選択した方が、美容的でより安全と考えられます。このような判断は個別の患者さんベースでの検討が重要で、なかなか一般論では語れません。こういう問題こそ担当の医師とよく相談する必要があります(乳房切除の項参照)。
余談ですが断端の評価方法もさまざまで、断端陽性の定義もさまざまです。がんが露出していなければ陰性とするのが国際的には最も受け入れられていますが、日本では5mm以上離れていないと陰性としないという基準を採用している施設が多数です。臨床医学データを解釈する際、どういう基準(プラットホーム)で集められたデータかが重要になります。
病理検査で術後補助療法を決定
一方、手術で摘出した組織は、ホルマリン固定された後、薄くスライスされて顕微鏡による病理検査が行われます。その結果によって、手術後の治療方針が決まります。
最近は術前に針生検を行うことが多いので、術前にがんの組織タイプ、異型度、ホルモン受容体の有無、HER2結果などがすでに分かっています。
手術後の病理検査で、これらの因子の再確認とともに、がんの大きさ、リンパ節転移の有無や個数、がんが取りきれているかどうかなどさまざまなことを調べます。
術後補助療法を決める上で特に重要なのが、ホルモン受容体の有無と、HER2蛋白の過剰発現の有無です。ホルモン受容体が陽性ならばホルモン療法が、HER2蛋白が過剰発現していれば分子標的治療薬のトラスツズマブが有効ということを意味しています。
がんの再発のリスク評価と前述したサブタイプに応じて治療法が決められます。すなわちホルモン療法、抗がん剤、分子標的治療薬、のうちどの治療法が効果的か、あるいは具体的にどの薬剤をどの順番でどれだけの期間投与するのかが決められます。
これが術後補助療法です。0期以外の乳がんの場合、ほとんどの人が手術だけではなく、補助薬物療法を受けることになります。それによって、あきらかに再発率が下がることが証明されているからです(詳細は薬物療法を参照)。
[コラム] 切らずに治す・乳がんの最新治療法
乳房温存療法は、乳がん手術に画期的な変化をもたらしました。しかし、できれば小さながんは乳房を傷つけずに治したい、というのが女性の願いです。これを実現する試みが行われています。
それが、MRガイド下集束超音波療法や、ラジオ波熱凝固療法、凍結療法などの治療法です。
MRガイド下集束超音波療法
虫メガネの要領で超音波のエネルギーを一点に集中させ、熱でがん細胞を殺す治療法です。MRIという画像診断装置を使ってがんをねらうので、MRIガイド下と呼ばれています。
すでに子宮筋腫の治療で使われている治療法で、まったく目新しい治療法というわけではありません。MRIの画像から、がんの温度がどのくらいまで上がっているかとか、焼け残りの有無などもわかるので、世界的に研究が進んでいます。焼け残りがあれば、もう一度焼くこともできます。
日本では宮崎のブレストピアなんば病院で実施されています。
ラジオ波熱凝固療法
画像で確認しながら、がんの病巣に外から針を刺し、高周波で焼き飛ばす方法です。すでに早期の肝臓がんなどでは一般的に行われています。
乳がんの場合、アメリカで2センチ以下の早期がんを対象に行われた臨床試験では、87%で効果があったと報告されています。ただ、乳がんの場合、早期と診断されても、実際には広範囲に広がっているケースもあるので、肝がんとはまた違った注意が必要です。
凍結療法
がんの病巣に針を刺して急速冷凍し、いったん解凍して再び冷凍する方法です。舌がんなどで行われている方法ですが、乳がんの細胞も同じように凍結することで死滅するのかどうか、検討がつづけられている段階です。
いずれもまだ研究段階の治療として行われており、標準治療としては認められていません。このためすべて臨床研究として実施される必要があります。治療のプロトコール、期待される効果と不利益に関する書類に目を通し、説明を受けた上で文書にサインして研究に参加することになります。
乳がんは主病巣だけではなく、周囲の乳管内にどれだけ病変の広がりがあるかが、局所コントロールのため重要です。また主病変の組織検査から得られる、各種バイオマーカー、遺伝子レベルの情報が将来ますます重要になると思います。このため手術が縮小されていくとは考えますが、手術をしないということの意義はあまりないと個人的には考えています。