乳がんを見つけるための検査

異常の有無をみる検査

 乳がんを見つけるための検査は、視触診、マンモグラフィそして超音波検査の3つが基本です。

マンモグラフィ

 乳房を2枚の板ではさみ、X線で乳腺の状態を撮影する検査です。小さなシコリだけでなく、シコリになっていない微細な石灰化を見つけられるのが特徴です。乳腺内にとどまる非浸潤がんは、何の症状もありませんが、増えたがん細胞にカルシウムが沈着して石灰化としてレントゲンにとらえられます。石灰化の大部分はがんが原因ではありませんが、石灰化の形や分布などのパターンから、がんの可能性の有無を判断します。こうして見つけた石灰化をマンモトーム検査という方法で採取して病理検査を行います。これにより小さな非浸潤がんの診断が可能になります。

超音波検査

 マンモグラフィは、自治体などの検診にも導入されて、乳がんの早期発見に力を発揮しています。しかし、若い人の乳房には十分とはいえません。なぜなら、がんは画像上白く写るのですが、乳腺も白く写るため、若い人は乳腺が発達しているので乳房全体が白くなり、がんがわかりにくいからです。これを補うのが、超音波検査です。超音波検査は、皮膚の上からプローブという端子@たんし@をあてるだけなので、患者さんに負担がないのも長所です。

がんの確定診断

 マンモグラフィや超音波検査で疑わしい兆候があった場合に、がんかどうかを確定するために行うのが、細胞診や針生検などの精密検査です。

細胞診<さいぼうしん>(穿刺吸引<せんしきゅういん>細胞診)

 疑わしいしこりに細い注射針を刺して、細胞を吸引します。採取した細胞を染色して、顕微鏡でその細胞を調べる検査です。細胞の形態は、以前は5つのクラスに分類されていましたが、現在は「正常」「悪性の疑い」「悪性」という3段階に分けられています。
 細胞診は、麻酔もせず、割合簡単にできる検査なのですが、診断の確実性がしばしば問題になります。また最近は診断の確実性だけではなく、がんの場合ホルモン受容体、HER2受容体、そしてKi67などの増殖マーカーが重視されるようになりました。このため現在では細胞診ではなく針生検<はりせいけん>が第一選択になっています。

生検<せいけん>(組織診)

 シコリや石灰化した部分の組織を採取して、がん細胞があるかどうかを顕微鏡で調べる検査です。 生検には、針(鉛筆の芯ぐらい)を刺して組織を採取する針@はり@生検と、乳房を切開して組織を取ってくる切除@せつじょ@生検(外科生検)があります。いずれも局所麻酔をして行います。
 切除生検の場合は、疑わしい組織を切除して調べるので、確実性が高いのが利点です。しかし、小規模な手術になるので、2~3センチの傷痕が残ります。実際には、検査を行っても、がんではない場合のほうが多いので、最近は他の方法でどうしても診断がつけられない場合に限定されて行われています。
 通常は、超音波の画像で針先を確かめながら組織を採取する針生検(超音波ガイド下針生検)が行われます。
 ただし、石灰化で見つかった微小ながんの場合は、もう少し多くの組織を取って調べる必要があります。こうした場合に効果的なのが、マンモトームという針生検(吸引式針生検)です。これは、マンモグラフィでリアルタイムにとらえた石灰化部分にコンピュータを使って正確に針を刺し、組織を採取する方法です。針が少し太め(3ミリぐらい)なので、採取できる組織の量も通常の針生検より多く、十分な検査ができます。
針生検やマンモトームで組織を採取し、がんの診断だけではなく、ホルモン受容体、HER2受容体、組織異型度、Ki67などさまざまな因子も同時に調べ、治療計画を立てるというのが基本的な流れになっています。(マンモトームの写真やイラスト)

特殊な検査

 このほか、乳頭部から分泌物がある場合には、乳管の中に造影剤@ぞうえいざい@を入れてX線撮影をする乳管造影検査や、直接乳管に極細の内視鏡を挿入して、内部の状態を観察する乳管内視鏡検査があります。内視鏡検査は、同時に生検のための組織を採取することもできます。