乳がん治療後の生活について

乳がん治療後の生活について

定期検診の頻度は?

 乳がん治療を受けた人にとって、一番気になるのが再発です。手術をした乳房付近に発生した局所再発は、自己検診でも発見できるので、月に一度の自己検診はつづけましょう。また、反対側の乳房の状態も、ふだんから気をつけて見てください。
 病院では、手術後3年間は、問診と視触診を3~6カ月に1回、4年目から5年目は6カ月から1年に1回、それ以降は年に1回行うことが勧められています。
 ほかの検査で有効性が認められているのは、年に1度のマンモグラフィだけです。
 いろいろな画像診断、特にPET-CTなどの高額の検査もありますが、遠隔転移の場合は、早期発見しても治療成績は同じなので、むしろいろいろな検査を受けるよりは、症状が出てから検査を受けたほうが、精神的な負担も少ない。またそれ以上の検査は税金の無駄遣いだから保険でカバーすべきでないという考え方が現代の乳がん診療の根本にあります。前述したように(●●ページ)こうした考えた方への疑問はもちろんあります。
 しかし、たとえば骨シンチグラム検査は偽陽性@ぎようせい@が多く、スクリーニング検査で転移が疑われてもほんとうに転移がある人は10%程度だったという報告もあります。偽陽性の人は大丈夫という結果がわかるまで、何カ月もの間大きなストレスをかかえながら生活しなければならないことも少なからずあるのです。
 検査を受けて、安心を得たいという心情も非常によくわかるのですが、結局検査では安心が得られないというのも一面の真実なのです。それよりも、患者会やサポートグループなどに入り、精神的な支えを得ることのほうが意味が大きいかもしれません。
 乳がんの患者会やサポート団体は数も多く、活発に活動しているところも多いので、インターネットなどで調べて、自分に合いそうなグループに相談してみるといいと思います。

仕事や家事はつづけていい?

 自分の体調に合わせて、仕事や家事をするのはまったく問題ありません。どんな病気でも、過労はよくありませんが、医師から特別な指導がないかぎり、仕事も家事も旅行も楽しくつづけてください。悪いものは取ってしまったのですし、また何をしなければ再発しないというわけでもないのです。
 ただ、仕事の場合は、体調や術後の治療とのかねあいもありますので、復帰の前に、上司に体調や今後の治療予定などを話して、どの程度の仕事から始めるかを話し合っておくと、スムーズに復帰ができます。特に、最初はラッシュの通勤などは体に負担がかかるのでなるべく避け、体を慣らしながら、ゆっくりと元の生活に戻るようにしましょう。

食事や健康食品は?

 食事とがんの関係は研究が進んでいますが、現在のところ、科学的に予防効果が認められているものはありません。ただ、高脂肪・高カロリーの食事と、多量の飲酒、運動不足などは、健康の面も含めて避けるべきでしょう。
 緑黄色野菜や果物は、がんを防ぐ働きがあるともいわれているので、積極的にとりたい食品です。大切なのは、乳がんに限らず、バランスのよい食事を規則正しくとることです。体によいとすすめられても、それで食事のバランスが崩れては何にもなりません。また、肥満は閉経後乳がんのリスク要因であることを覚えておきましょう。
 健康食品に関しても同じで、直接がんを治したり、予防する効果は認められていません。しかし、抗がん剤の副作用や、臥床による体の痛み、精神的な不安などには効果のあるものもあります。健康食品を試すときは、主治医や看護師の意見を聞いてからにしましょう。
 気功やマッサージ、鍼、リラクゼーション、適度な運動、心理療法などは、精神的な面で助けになることがあります。健康保険で認可されていない免疫療法なども、大学をはじめ様々な施設で熱心に研究されています。しかし、いかにもそれらしい名前でまったく根拠のない治療を行っているところもあるので、こうした民間療法や代替療法を受ける場合には、主治医とよく相談することが大切です。

治療後の性生活について

 乳がんは、女性ホルモンと関係の深いがんです。しかし、性行為によって女性ホルモンの分泌が増えたり、がんが促進されることはないので、安心してください。乳がんの治療によって、性生活が制限されることはありません。
 ただ、体の状態が以前と同じではないかもしれませんので、手術後、傷の状態がある程度よくなった段階で、パートナーときちんと話し合うことが大切です。リンパ節の郭清や手術の傷で腕をあげるのがつらかったり、姿勢にも制限があるかもしれません。圧迫されると、不安感があるという人もいます。触れられると、違和感があって気持ちが悪いという人もいます。正直な気持ちを伝えることが必要です。
 また、ホルモン療法や抗がん剤の影響で、膣からの分泌物が減ったり、膣が萎縮することもあるので、うるおいを補うゼリーなどが必要になることもあります。
 なお、避妊が必要な期間は、生理が止まっていたとしてもコンドームによる避妊が必要です。排卵があることもあるからです。ピルは、乳がんを促進することがあるので使えないことも覚えておきましょう。
 性生活は、お互いの理解やいたわりが大切です。よく話し合って、パートナーとの新しい関係をつくっていきましょう。

車の運転やスポーツ

 スポーツに関しても、特にしてはいけないというものはありません。手術した傷あとが痛まないか、翌日まで残るほど疲れないか、といったことを考えてスポーツの種類を選びましょう。腕が伸びにくかったり、脇がつっても、特にそれが悪いということはありませんが、楽しくできることが大切です。
 手術後は、体のバランスが崩れたり、動作が遅くなったりするので、車の運転などは、体が十分日常生活に慣れてからのほうが安心です。